2013年07月30日

エネルギー貯蔵庫

一番身近にあるエネルギー貯蔵庫は、乾電池だが、エネルギー貯蔵庫は多くの分野に使用されている。パソコンやタブレットなどのコンピュータや携帯電話などの電子機器の他、電気自動車、UPS、発電所、送電網、配電網など多岐に渡る。電気は発電するとすぐに消費されなければ、なくなってしまう。一部少量の電気の貯蔵はできるが、大量に長時間取り出すことのできる技術は今のところまだない。

法律、AB 2514
前回どのような優れた技術も政治の後押しがなければ、前に進まないと書いた。今回はカリフォルニア州のエネルギー貯蔵庫に関する法律について簡単に触れる。繰り返すが米国は分散型国家であり、日本のような中央集権的な国家とは異なり、州の力が非常に強い。そのため、州法と連邦法がぶつかることもある。AB2514は大規模エネルギー貯蔵庫に関する法律である。電子機器やビル管理やその他の分野には直接は関係がない。2010年の9月に法律として成立した。

内容は少々ややこしいが、以下のようなものである。

カリフォルニア州の公益事業委員会(CPUC)に対して、2012年3月1日までに以下の検討を命令する。カリフォルニア州内の電力会社に対して、適正なエネルギー貯蔵庫システムを獲得し2013年10月1日までに、達成できる容量を規定する。このゴールが妥当であると判断されれば、最初のゴールは2015年12月31日で、二番目のゴールは2020年12月31日である。

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CPUCは電気に限らず、その他の公益事業も監督する。電力料金などもここが決定する。新しい技術であるので、今の時期からはっきりと達成目標を決めることが困難なためこのような文言になっているのであろう。現時点では、今年の10月1日までに達成できる容量をそれぞれの電力会社に対して決定しなくてはならないが、これより先の6月にCPUCは電力大手の3社(北部と中部に電力提供するPG&E 下の地図では白、ロスアンジェルス近郊のSCE下の地図ではベイジュー、とサンディエゴのSDG&E、下の地図ではオレンジ)に対して、まだ決定ではないが、総容量1.3GWを確保する提案をだした。内訳はPG&E 580MW、SCE 580MW、SDG&E 165MWだ。

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大手の電力会社はCPUCからの貯蔵容量の規定に反対している。現在は貯蔵に掛かる経費が高く、ビジネス的に採算が合うかどうか不明だからだ。しかし、この動きは止めることができないだろう。

現在カリフォルニア州には多くのエネルギー貯蔵のプロジェクトが展開している。PG&Eの圧縮空気を利用した持続時間10時間で300MWのエネルギー貯蔵庫もその1つだ。その他に日本ガイシのNAS電池を利用した貯蔵庫をシリコンバレーで運転し始めている。6時間持続でき4MWの出力がある。他にも様々な大小のプロジェクトが存在するが、全体的に実験的なものが多い。

再生可能エネルギーとの関係
日本でも議論になっている再生可能エネルギーは主なものは太陽光と風力であるが、どちらも発電量が一定でない。雲が出れば太陽光が遮られて発電量が落ち、突然風が止めば風力発電は止まってしまう。この不安定な電力を安定させる方法は現在では、天然ガスを利用したガス・タービンで発電量を調節している。再生可能エネルギーの利用度をあげると化石燃料である天然ガスの消費が増加するとは皮肉な話である。しかし、大規模なエネルギー貯蔵が可能となれば、その貯蔵庫からの充電と放電で必要な電力を安定させることが可能となり、ガス・タービンは必要がなくなる。

また将来書こうと思うが、カリフォルニア州は2020年までに全発電量の33%が再生可能エネルギーから発電されたものでなければならないという「再生可能エネルギー利用割合基準」という 法律がありRPSと呼ばれている。ちなみに同様な法律は他の州にも存在する。再生可能エネルギーの利用率が増加すれば、エネルギー貯蔵庫の容量も増加する必要がある。ある専門家によればこの割合を支援するには、上で述べられた1.3GWよりも多い4GW規模の容量が必要だと言われている。これが正しいのかどうかは現時点では分からない。
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2013年07月26日

カリフォルニア州のクリーン・エネルギー法案とそれに沿った動き

このブログは技術的な話が多いが、技術だけではクリーンテックは動かない。強力な政治の支えがなければならない。そういうことで、今回はカリフォルニア州で起こっているクリーンテックへの追い風に関して、1つの法律を簡単に述べる。この動きに沿うようにして設立されたのが前回発表したブログで紹介したSEEDZプロジェクトだ。簡単に言うと、シリコンバレーでsmart energyを提供できるインフラ、政策、投資を結集しようという動きだ。

今回は既に法律となったAB 32とそれを実現するCap and Tradeに関して述べる。

AB32
AB32は2006年の9月に法律となった。これも簡単にいうと、2020年までにCO2を含む温室効果ガス(GHG)の排出を1990年のレベルまで戻すというものだ。更に2050年までには1990年のレベルから80%の削減を目指している。カリフォルニア州全体ではないが、シリコンバレーのSunnyvaleとMountain Viewの両市で、GHG排出の割合を調べたものによると、交通(車の排気ガス)が45%を占め、商業・産業界の電力消費が26%を占めている。この2つで71%を占めるのだから、この2つに焦点を当てた対策が当然必要となる。 

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Cap and Trade
AB32はカリフォルニア州の環境保護庁(CALEPA)の一部門であるカリフォルニア大気資源委員会(CARB)にこの法律を実行するためにCap and Tradeのプログラムを施行する権限を与えている。これを受けて、7年の準備期間を経て今年2013年1月に施行された。Cap and Tradeは日本でも周知である。環境省東京都のページを参照されたい。簡単に言えば、産業や事業所の大きさに応じてGHGの排出量の上限を求め、それを超えるものには罰金を課すものである。しかし、排出権は取引可能で、自分の許容排出量を超える場合、他から排出権を入手することで、この罰則を逃れることができる。排出権取引は新た市場を形成するとして期待されている。

日本の場合、東京都は環境省が発表しているものより、厳しい制限を加えている。日本は中央集権国家なので、地方公共団体が独自に法令を作成して施行することは稀であるが、米国は分散型国家のため、州毎に法律が異なることがある。時々連邦政府と意見が合わず問題となることもある。地方警察とFBIの捜査官がもめる様子が映画などで見ることができる。

同様のCap and Tradeは連邦政府版は2010年に廃案になったが、カリフォルニア州の他北東部の9の州(Connecticut, Delaware, Maine, Maryland, Massachusetts, New Hampshire, New York, Rhode Island, Vermont)で同様のプログラムが地域温室効果ガス・イニシャティブという団体によって施行されている。ちなみにカリフォルニア版はこのプログラムとEUの排出権取引スキーム(EU-ETS)を下敷きにしている。

施行の詳細
では気になる詳細はどうだろうか。また、これがIT産業に与える影響はどうだろうか。それぞれの事業所はそのビジネスの活動の一環として、様々なエネルギーを消費する。ITもその1つである。特に、ITによる電力消費の密度が高いデータセンターの運営者にとっては大きな問題である。日本では日本データセンター協会(JDCC)がデータセンターの特殊性を東京都に説明して、一律に消費電力だけで判断されないように要請している。

最近参加したDatacenterDynamicsのコンファレンスでは、この問題が指摘された。カリフォルニア大気資源委員会(CARB)のスピーカーによれば、このプログラムは2つのステップに分けて適用される。まづ2013年からは発電者、電力移入者(自前で発電しないが他から移入するもの)と大手の産業企業である。

詳細は年間25,000トン以上のCO2を排出するものに限る。データセンターに限れば、CO2を排出するには、ディーゼル発電機を使用することが大部分である。つまり、電力消費は除外されるわけだ。25,000トンのCO2はラフに250万ガロン(9460Kl)のディーゼル燃料に匹敵する。カリフォルニア州内でこのような大量の燃料を年間消費するデータセンターはない。そのため対象から除外されている。しかし、現在大量に電力を消費する産業であるデータセンターなどに異なったプログラムを適用しようという動きもある。

2015年からは燃料を配給する業者も適用の対象となる。そして徐々に認められ排出量も減少していく。まだ施行が開始されたばかりだが、今後の動向が注目される。
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2013年07月18日

シリコンバレーの電力事情をICTで改善する

日本同様、米国でも電力事情を改善しようとする動きが見られる。スマートーグリッドとかマイクログリッドとして紹介されている。特にマイクログリッドとしては、全米で約10件のプロジェクトが知られている。その中には、NEDOが推進する日本勢のニューメキシコ州やハワイでのスマートグリッドのプロジェクトも含まれる。

シリコンバレーでの高品質電力への開発
ところが、技術やイノベーションで有名なシリコンバレーでは現在までその動きはなかった。既知のように、スマートグリッドは電力、ITと通信の融合と言われている。当然ながら、ITと通信の会社はシリコンバレーにはごまんとある。今までこの動きがなかったことの方が不思議である。地域を決めて、それぞれの利益が絡む電力、ITと通信のステークホールだーをまとめて、こういったものを建設するのは容易ではない。その中心と言うか核になる団体が必要だ。

この役にぴったりなのが、Joint Venture Silicon Valley (JVSV)だ。JVSVは1993年に創立され、シリコンバレーの地域の経済や生活の質に影響する問題を解析し問題解決のために必要な活動を行う。JVSVは広くビジネス、政府、学術研究機関などの既存および新規のリーダーを結集して問題点にスポットライトをあて、革新的な解決方を目指す。JVSVの会員はそうそうたるシリコンバレーの会社を含む。例えば、AT&T、Adobe、AMD、Cisco、Google、HP、Juniper、Microsoft、NetApp、Oracle、VMwareなのだ。日本関係では三菱、NEDOとJertoが会員だ。

JVSVは2012年の夏にSmart Energy Enterprise Development Zone (SEEDZ)への構想が始まった。筆者は直接は関わらなかったが、ホワイトペーパーへのコメントや議論に参加した。SEEDZはシリコンバレーの電力消費者、機器ベンダー、電力事業者、シリコンバレーの市町村やその他の関係団体を結集して未来のスマートエネルギーネット・ワークを構築するプロジェクトだ。ここでいうスマートエネルギーネット・ワークは高い信頼性、品質、安価や持続性を提供できるものだ。

SEEDZの地域
シリコンバレーの地理に詳しくないと場所を特定しても分かりにくいかもしれないが、以下に示す。

smart-energy-region.jpg

出典: Joint Venture Silicon Valley

太字のオレンジの枠で囲まれたのが、SEEDZの領域だ。真ん中に見える滑走路が、NASAの研究所があるNASA AMESだ。その西はMoutain View市でここにGoogleの本社がある。NASAの東はSunnyvale市で、YahooやJuniperやNetAppがある。南の境界は高速道路の101号線と237号線だ。当然シリコンバレーはもっと広域だが、この地域が選択されたのは理由がある。この地域は99.99%が商業および産業ビルで、普通の家庭を殆ど含まない。米国の他のスマートグリッドやマイクログリッドのプロジェクトはどちらかというと、一般家庭を対象にしているものが大部分だ。

この地域のプロファイルはどうかというと

* 地域の広さは2,140万メートル平米の中に470の建物でその所有者の総数は380で大部分はハイテックのオフィース、研究所とデータセンター
* 175-200 MW の需要
* 約13 MWが分散型発電によって生成されている。発電元は太陽光、バイオガス、燃料電池やコ・ジェネレーション
* 数百の電気自動車の充電ステーションの設置

主要な要素
このプロジェクトは複雑で多くの要素を含むため、大きく8の分野の分かれている。

1. ビルディング・システム->ビル内の冷却、照明、EMS、持続したエネルギーチューニング

2. デマンドと応答->DR/ADRおよびダイナミック‐プライシング

3. 電力系統のインフラ->電力品質、自動配電システム、自動回復

4. 技術の相互運用性->米国国立標準技術研究所(NIST)のスマートグリッド技術の相互運用性、各要素間の相互接続・運用性の保証

5. モチベーションと出資->出資のためのストラクチャー

6. エネルギー貯蔵庫->各種のエネルギー貯蔵とその応用

7. 電気自動車->充電ステーション、スマート充電、電力系統への影響

8. 分散型発電->太陽光、燃料電池、バイオガス、その他

現在までに、ビルディング・システム、電力系統のインフラ、エネルギー貯蔵庫と分散型発電のワークショップが開催されている。次は電気自動車のワークショップが計画されている。

筆者は最近SEEDZの戦略的アドバイザーとして就任した。今後SEEDZの活動を時々報告したい。
posted by infogreen at 05:35| Comment(0) | ICTとエネルギー